華柳院の娘は苦労人

♂1♀3/所要時間:20分ほど/ギャグ系


華柳院 千春(かりゅういん ちはる) 華柳院家のお嬢様
高木 小夏 (たかぎ こなつ)    華柳院家の執事、現在は千春専属
高木 冬香 (たかぎ ふゆか)    華柳院家の女中、小夏の姉
白浜 秋代 (しらはま あきよ)   千春の親友

千春♀:
小夏♂:
冬香♀:
秋代♀:


 ノック音
小夏:お嬢様、入ってもよろしいですか
千春:ああ
小夏:失礼いたします。
   おはようございます、お嬢様
千春:おはよう
小夏:今日はたいへんいいお天気ですね
千春:そうだな
小夏:本日から夏休みだそうで
千春:そうだな
小夏:夏休み初日、外に出てくれと言わんばかりのこの天気
   どうでしょう、外に出てみては
千春:遠慮する
小夏:そんなことおっしゃらずに
   いつもの読書を庭のベンチでなさるとか
千春:私がそういうのをしないの、君は知っているだろう
小夏:それは… 存じ上げております
   お嬢様は日光が大嫌いでございますから
千春:わかってるじゃないか
小夏:ですが、今日は夏休み初日!
   そして天気は晴れ!
千春:それはさっききいた
小夏:ですからお嬢様、外に出てみてはいかがでしょう
千春:話が繋がってない!
   いつもより丁寧な話し方をしているなと思ったら、
   そんなことをいいに来たのか
小夏:こう、丁寧にお願いしたら、少しは望みがあるんじゃないかと
千春:むしろいつもと違いすぎて気持ちわるいわ
小夏:サッカーやろうぜ!
千春:いきなりフランクだな!
   なんでサッカーチョイスなんだ!
小夏:いや、なんとなく
千春:[ため息]
小夏:別に日光アレルギーがあるわけでも無いし、
   日光に少しでも慣れるために外に出ていただけるとありがたいんだが
千春:知らん。君に恩を売る必要なんてないだろう
小夏:室内にこもりっぱなしなんて、不健康ですよ、お嬢様
千春:別にこもってない、そしてさっきからところどころ敬語にしきれてない
小夏:じゃ、外に出てくれんだな!
千春:敬語を外せとも言っていない!
小夏:では、外には出ていただけないと
千春:さっきからそう言っているだろう

小夏:それではお嬢様は、今後一切外に出ずに一生を過ごすのですね
千春:え
小夏:家に引きこもり、親のすねをかじり続け、
   最後には野垂れ死んでいくのですね…
千春:どうしてそうなる
小夏:はっ…!
   もしかして、日光に当たれないお体に
千春:もしもーし
小夏:外に一歩踏み出した瞬間に
   『私、本当は日光が嫌いなんじゃなくて、日光に当たれないの…うっ!』
   みたいな
千春:私はそんな病弱キャラじゃない
小夏:では、日光に当たった瞬間に悶え始めて
   『私、本当は吸血鬼だったの』と…
千春:ファンタジーだな!吸血鬼って!
   大体私は、昨日も学校に行っているではないか
小夏:昨日の夜、体に異変が
千春:そんなことあったら起きてすぐに誰かしらに相談してる
小夏:お嬢様、外に出ていけない理由がないのでしたら、
   外に出ていただけますよね
千春:…それじゃあ、夜に出よう
小夏:分かりました
   お嬢様の外出を確認しましたら、窓、扉、共に全て施錠させていただきます
千春:なっ
小夏:どうなさいました?
千春:お前は、どういう頭してるんだ
小夏:ただ、夜が明けるまでずっと外に出ていただけたら日光にあたれるのでは、と
千春:夜通し起きていろというのか
小夏:庭にキャンプの道具を一式準備させていただきますね
千春:野宿しろと
小夏:ダメですか
千春:ダメだ
小夏:夜間は鍵をかけないと防犯上よろしくありませんし
千春:それと私を締め出すことに何の関係がある
小夏:なにも
千春:言い切ったな、清々しいほどに

小夏:…お嬢様、どうしてそんなに日光が嫌いなのですか
千春:どうしてって…暑いし眩しいし
小夏:それは、太陽ですからね
千春:なんというか、度が過ぎているのが気に食わん
   暑すぎる、そして眩しすぎる
小夏:僕は太陽好きなので、そんな風に考えたことないですね
千春:へぇ、そうか
小夏:明るいおかげでこんな大きなお屋敷でも明かりをつけなくてすみますし
   何より、お洗濯物がはやく乾くのがいいですよ
千春:なんだか主婦目線だな
小夏:洗濯物を干したまま通り雨がくると「何なんだよー!」と
   全力で叫びたくなりますね
千春:全力で?
小夏:はい
千春:そこまで?
小夏:それはそうですよ
   折角綺麗になったお洋服やタオル、シーツ、
   それにお嬢様のお気に入りのぬいぐるみまで、
   また洗濯をしなければ
千春:私のぬいぐるみ!?
   まさか、みゃんすけを…
小夏:汚れたら洗濯しなくては
千春:時々みゃんすけがいなくなっていると思ったら、
   洗濯されていたのか…
小夏:お嬢様の年齢でぬいぐるみが無いと眠れないというのは、
   お恥ずかしい
千春:仕方がないだろう!みゃんすけがいないといい夢が見れないんだから
小夏:17にもなってまだそんなことを…
千春:うるさい!

小夏:もう少し幼ければ、かわいいと思うだけなのですが
   なんと言いますか、精神面だけ幼いままで…
千春:誰が精神年齢低いって?
小夏:それはもちろん…
千春:君、喧嘩売ってるよな
小夏:分かりました。
   みゃんすけの代わりに僕が添い寝をして差し上げましょう
千春:なにがわかったんだ!?
小夏:代わりのものを抱いて寝ればいい夢が見れるのではないかと思ったので
   でしたら、僕が代わるのが手っ取り早くていいのでは
千春:代わらんでいい!
   君に抱きついて寝るくらいなら一人で寝る!
小夏:左様でございますか
千春:君は私をいじるのがそんなに好きか
小夏:僕のことがお気に召さないのであれば、解雇していただいて構いませんよ
千春:…しない、そんなこと
小夏:…ありがとうございます

冬香:お嬢様と執事という立場を超え、互いに信頼を厚くしていく2人
   そしていつしか、恋に落ちて…  あぁ…おいしいわ
千春:…冬香、いつからそこに…?
冬香:いつから…ですか、そうですね
   小夏が扉をノックして、部屋に入っていったところからですね
千春:要するに、最初からそこにいて、全てを見聞きしていたと
小夏:付け加えていうのであれば、僕よりも先に扉の前にきて
   お嬢様とみゃんすけの恥ずかしいやり取りをこそこそと聞いていましたよ
千春:…
冬香:だって、ぬいぐるみに一生懸命に話しかけてる千春ちゃんかわいくて
   それに、小夏と千春ちゃんがとっても楽しそうに会話してるから…
千春:ほう…変なことに聞き耳を立てて、
   さらにさっきの会話が楽しそうだと…
   姉弟そろって、頭がどこかおかしくなっているんじゃないのか
冬香:千春ちゃん、そんなこと言わないで
   あぁ、でも、そんなこと言ってる千春ちゃんも、かわいい
千春:時々思うんだが
小夏:何をでしょう
千春:君よりも、君の姉の方が若干面倒だと
小夏:お嬢様、それは間違っております
千春:君がまともだという意見は受け付けんぞ
小夏:姉は、僕の倍以上面倒です
冬香:ひどいわ、2人して。 否定はできないけど
   というか、小夏。 私との面倒さの差が若干だと思わせるほど
   あなたも面倒な人間になったってことじゃないの
小夏:お嬢様、僕、切腹してお詫びを
千夏:待てい! この流れでどうして切腹する!
冬香:小夏、介錯は私が
千春:だから待てと言っている!
冬香:千春ちゃん、小夏の決意を無駄にしないで
千春:なぜ私がアウェイな空気を味わわなければならんのだ

小夏:茶番は置いといてさ、姉さん。
   お嬢様に用事があったから部屋にきたんじゃないの?
冬香:そうだったわ… すっかり忘れてた
千春:ここまでのやりとりはそれよりも大事なことなのか
冬香:私にとって、千春ちゃんが一番ですもの
   しゅんとしてる千春ちゃん、寝起きの千春ちゃん、
   あくびしてる千春ちゃん、怒ってる千春ちゃん、
   無表情の千春ちゃん、どれもかわいくて素敵
   あ、でも、笑顔の千春ちゃんがやっぱり一番ね
千春:ああ、そう
   私が一番というのなら、私のためにも用事を早めに済ませてくれるといいんだがね
冬香:(小声)小夏といるときのいきいきしてる千春ちゃんも素敵よ
千春:!?
小夏:お嬢様、どうかなさいましたか
千春:な、なんでもない
小夏:姉さん、なんか変なこと言ったでしょ
冬香:言ってないわよ、変なことなんて
小夏:嘘つけ、お嬢様の反応が今、明らかにおかしかったぞ
千春:[咳払い]それよりだ、用件はなんだ
   このままでは聞けずに一日が終わりかねない
冬香:あ、そうですね
   今朝、お電話がございまして、秋代様が遊びにいらっしゃるとのことです
千春:あぁ、秋代か
   それでいつ来るのだ
冬香:お昼頃ご到着予定でしたが
千春:が?
冬香:予定が前倒しになりまして
千春:前倒し?
小夏:もしかして扉の前に
冬香:いらっしゃいます
千春:到着してるなら尚更、なぜもっと早く言わない
   秋代とはいえ、客人だぞ
小夏:どうりで、扉の前に人の気配がするわけだ
千春:気配察知するなんてお前は忍者か何かか
冬香:それではお通ししても?
千春:許可なんてしなくても秋代は勝手に入ってくるだろう

秋代:呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃー…あ、呼んでない?
   ごめんごめん、呼ばれてなくてもじゃじゃじゃじゃーん!
   千春の親友! 白浜秋代ちゃんの登場だよーん!
千春:(呟き)面倒なのが増えた
秋代:ってことで… ちーはーるー!
千春:うぐっ…秋代、苦し
秋代:ごめん千春ー、もう少し、もう少しだけ抱きつかせて
千春:く、苦しい…暑い…
秋代:もう少しー
千春:もうそろそろやめ…
秋代:あとちょっとー
千春:あ、秋代
秋代:あとほんのちょっと!
千春:うがぁあああ! 【秋代を引き剥がす】
   暑い! 苦しい! 邪魔だ! 抱きつくな!
秋代:えー… 折角愛しの千春に会いに来たのに
   つーめーたーいー
千春:抱きつくなと言っただけだ
   大体いつもいつも、君のスキンシップは過度なんだ
秋代:千春、そんなこと言わないで
   あぁ、でも、そんなこと言ってる千春も、かわいい
千春:あれ? デジャヴか?
   それちょっと前にきいたぞ
冬香:そうだったかしら
小夏:きっとお嬢様の記憶違いですよ
千春:いやいや、なんか思ったよりも鮮明に残ってるぞ似たようなやりとり
冬香:そうですか? 私の記憶にはありませんが
小夏:もしかして目を開けたまま寝ていらしたんですか?
千春:これはなにかの陰謀か?
   みんなで手を組んで私を陥れようとしているのか
冬香:手を組むだなんてそんな…
小夏:大体、秋代様と姉さんが思い通りに動くわけないでしょう
千春:陥れようとしていることは否定しないんだな
小夏:そんなことより
千春:そんなこと!?

小夏:秋代様、遊びにいらっしゃったのですよね
   ご予定はすでに立ててあるのでしょうか
秋代:あたしの予定は、大好きな千春と一緒にいることよ
小夏:…
冬香:予定はまだ未定ということですよね
秋代:だから、あたしの最愛の千春と一緒にいること
冬香:…それが秋代様の予定、だと
小夏:なんだか最近聴力が弱ってきたようです
秋代:え、小夏くん大丈夫?
小夏:いけません、幻聴が聞こえます
秋代:幻聴? なにが?
小夏:幻聴とは『実際には音がしていないのに、聞いたように感じること』ですよ
   今回は秋代様の言動のすべてが幻聴ですね
秋代:実際には音がしてないのに、音聞こえるの?
   小夏病気じゃん!
小夏:そうですね
秋代:あれ? まって
   あたしの言ったことが幻聴?
   あたし幻聴喋れるの!? すごくない?
小夏:そうですね
冬香:あぁ、ややこしいことに
千春:こんなにわかりやすく貶されているのに、気付かないなんて
小夏:病気が悪化する恐れがありますので、
   秋代様には早めにお帰り願いたいですね
冬香:あら、来てそうそう帰れだなんて、そんな酷いこと言っちゃだめよ
   秋代様が可哀想でしょ
   せめて、猿ぐつわで許してあげて
千春:猿ぐつわも充分酷いけどな
秋代:猿ぐつわって何?
冬香:ご存知ありませんでしたか
   猿ぐつわとは『声をたてさせないために布などを口に押し込んだり、かませたりするもの』

   のことですよ
秋代:へー、勉強になるなぁ
千春:そんなこと覚えてもテストには出ないけどな
小夏:姉さん、変なこと覚えさせちゃダメだから
冬香:そんなに変なことかしら? 辞書に載ってるわよ
小夏:辞書に載ってるかどうかを基準にする時点でなにか間違ってるから
冬香:そうなの?
千春:話が逸れすぎてもうわけがわからん
小夏:大丈夫です。 中身のある話はほとんどしていませんから

冬香:そもそもこのメンバーでまともな話をしようというのが間違いです
千春:たしかに、そうだったな
秋代:なんだっけ、こういうの
   類は友を呼ぶ? だっけ?
千春:君らと一緒にされたくないな
小夏:僕も秋代様なんかと一緒にされるのはごめんです
冬香:そんなこと言うところが一緒なのよ
千春:そう言われると、否定できんな
秋代:あれ? 今あたし、なんかって言われなかった?
小夏:もしかして秋代様も幻聴が聞こえ始めたのでは?
   これは遊んでいる場合じゃありませんね
   ご実家に帰って休まれては
千春:お前はどうしてそう秋代を帰したがるんだ
冬香:きっと秋代様にお嬢様が取られるのが嫌なんですよ
小夏:僕はそこまで子供じゃない
冬香:どうだか
千春:なんだ、本当にそう思ってるなら、
   小夏にも可愛い部分があって微笑ましいなと思ったんだがな
小夏:普段の僕にもたくさん可愛げあるじゃないですか
千春:いかん、今度は私が幻聴を聞くようになってきたようだ

冬香:そういえば秋代様、本日はお泊りの予定でしたよね
千春:泊まり? いつまでいるつもりだ
秋代:今回の夏休みは千春とずっと一緒にいるつもり
小夏:夏休み、ずっと…?
冬香:あら、それではこの部屋に一番近い客室を手配いたしますね
秋代:ありがとー
千春:秋代、家の人にはちゃんと言ってきたよな?
秋代:うん、書置きしてきたよ!
千春:まさか、書置きだけ
秋代:なにも言わないと心配されるし、
   言ったら言ったで、止められるんだもん
冬香:あの、書置きにはなんと
秋代:えっとねー
   『ちょっと楽しいとこいってくるー!
   夏休み中は帰らないからそこんとこよろしく!
   探す必要全くないから、というか探される方が迷惑だから探さないでね!』って
小夏:[ため息]もう少しまともに書けないのですかね
千春:まあ秋代っぽいが
   小夏、すまんが白浜家に、秋代はうちで預かることになったと連絡を頼む
小夏:かしこまりました
   では、早速…
千春:あ、それと、2人分の飲み物を頼む
   できれば冷たいものを
小夏:うけたまわりました
   それでは失礼いたします
冬香:私も客室の手配をしてまいりますね
千春:頼んだ
 【冬香、小夏 退室】

秋代:ねー千春
千春:なんだ
秋代:予定まだ全然立ててない?
千春:夏休みのか? 立ててない
秋代:それじゃあ、折角だしさ
   小夏くんと冬香さんも交えて予定たてない?
千春:いきなりなんだ
秋代:いつもお世話になってるって思ってるんでしょー
   軽い恩返しだと思って!
   たくさんいた方が楽しいし、いいじゃない、ね!
千春:まぁ… そうだな
秋代:決定!
   後で2人に何がしたいか聞こ!
千春:ああ
秋代:そうと決まれば!
   千春ー! もっと抱きしめさせてー!
千春:ちょっ、来るな! 暑苦しい!


 【一方で】
冬香:私の弟は、独占欲がとっても強いようで
小夏:誰のこと言いたいんですか、姉さん
冬香:あら、聞こえちゃった?
小夏:私はお嬢様で楽しく遊んでるだけですよ
冬香:そう言う言い方するから、ツンツンされるのよ
   女の子には優しく接してあげるべきだわ
小夏:いやー、変な姉しか持たなかったもので、
   女性の扱いに慣れていないんですよ
冬香:いてこますぞ
小夏:遠慮します
冬香:あらそう、残念
小夏:うーん、グレープとオレンジ、どっち?
冬香:秋代様がオレンジ好きのはず
小夏:アップルがあれば良かったんだけどな
冬香:買ってくる?
小夏:夕方買ってくるよ
   とりあえず、オレンジジュースで
   それじゃ姉さん先戻ってるよ
冬香:はーい

【千春の部屋  小夏 入室】
小夏:お待たせいたしました、
   お二人ともお飲み物をどうぞ
秋代:わーい、オレンジジュース
千春:連絡はしてくれたか?
小夏:お嬢様がお世話になります、と女中の方が
千春:よかった

【冬香 入室】

冬香:失礼いたします
   千春ちゃん、秋代様、よかったらこれも一緒に召し上がってくださいな
秋代:これ何?
冬香:ショートブレッドっていうお菓子なの
   クッキーとケーキの真ん中のような感じだと思ってくれれば
秋代:もしかして冬香さんが作ったの?
冬香:そうですよ。 余り物ですし、お口に合うかはわかりませんけど
秋代:冬香さん作ったものならきっと美味しいよ!
冬香:ありがとうございます
千春:冬香は料理上手だからな
秋代:ねー、うらやましい
冬香:よろしければ今度一緒に作ってみますか?
秋代:やってみたい!
千春:そんなこと言って真っ先に飽きるんだろうな、秋代のことだから
小夏:折角なので、姉さんのお料理教室をご予定に入れてみては?
   夏休みはまだ始まったばかり、
   秋代様もまだまだ滞在予定ですし
千春:面白そうではあるな

秋代:作ったもの、たべていいんだよね!
冬香:もちろん。 味見をするのも大事な作業です
秋代:よーし! いろんな料理作っちゃうぞー!
千春:味見したいだけだな、これは
冬香:食べ物に関心があるのはいいことよ
   普段料理をしない人でも、
   何かをきっかけに自分の食べるものに関心をもって
   作ってみようって、それだけでいいの
千春:でも、ちゃんと自分で作るかどうか…
冬香:ちょっとでも作ろうって気持ちがあれば、美味しくなりますよ
   みんなの食べたいもの作って食べちゃいましょ
秋代:食べちゃいましょー!
冬香:それじゃ、食べたいもの教えてちょうだい
秋代:ブッシュドノエル!
小夏:最初からそれを作ろうと考えるなんて…
   秋代様のバカさをみくびっていたようです
千春:食べたいもの、という質問だからな

冬香:千春ちゃんは?
千春:私か… これといってないな
   明日になったら何か思いつくかもしれんが
冬香:そう… それじゃ小夏は?
小夏:僕? 簡単なものがいいだろうし…
千春:食べたいもの答えればいいだろう
小夏:食べたいもの…なら
   シフォンケーキがいいですね
   紅茶のやつ
千春:…紅茶の、シフォンケーキ
冬香:うーん… 始めは…何にしようかしら
秋代:クッキー! あの、えっと、格子模様のやつ! 食べたい!
冬香:では、それを作りましょうか
秋代:やったー!
小夏:あれ? 今から?
千春:明日の話じゃなかったのか
冬香:後回しにしてたら、絶対にやらなくなっちゃうでしょ
小夏:まぁ… それはそうかもだけど

冬香:それに、
   (千春に呟き)小夏に手作り、あげたくないですか?
千春:いや、まぁ …うん
冬香:決まりね。 それじゃあ、お二人共、キッチンへ
秋代:クッキー♪ クッキー♪
千春:秋代、そんなに暴れてると転ぶぞ
冬香:小夏、エプロンの用意お願いできるかしら
小夏:了解
冬香:エプロン準備したら、自室待機ね
小夏:は? なんで
   俺も一緒に…
冬香:だーめ
   女の子の女の子による女の子のためのお料理会なんだから
   男はお菓子が出来上がるまで待ってて
   できたもの持ってくから
小夏:(呟き)女の子って年でもないだろうに…
冬香:なにか?
小夏:なんでもないです
秋代:冬香さーん! はやくー!
冬香:それじゃ、エプロンよろしくね、小夏
小夏:すぐ届けるよ
[ため息]…ちゃんと食えるもの、来るよな…