詩、詰め合わせ -03 (2015年作品)

わがまま

一人ぼっちになりたいって嘘ついて
ほんとは寂しくて仕方ないのにそれを隠した

何よりも僕を大事にして、なんて
そんな自分勝手なこと言えるわけなくて
ほんとは僕を一番優先して欲しいのに

よくあるどうぞどうぞ精神が勝手に働いて
僕はいいよ、とか
僕よりもあの子のほうが、とか
僕は大丈夫だから気にしないで、とか
耳障りの良さそうな言葉ばっか並べる

自分の思いをかくして
都合のいい人になったつもり
自分はなんの得もないのに
そんなことしてなにが楽しいの?

迷惑かけたくない?
わがまま言いたくない?
迷惑とかわがままとか

そんなの自分が決めることじゃない
それは相手が決めること

少しくらい、頼ってみよう
少しくらい、わがままいってみよう
だってあなたはそれを望んでるかもしれない

…なんてちょっとばかし都合のいい考え方して
今度はあなたに少しだけ
わがままいってみようなんて思う


なみだ

瞳から落ちる涙
頬を伝い、ぽとりと落ちる

嬉しい時
悲しい時
気持ちを表現したいから
感情が溢れ出すから
涙を流すの

宝石のようにきらきらで
生まれたての赤ちゃんのように純粋で
誰かを想う人の心のように
繊細で、きれいだ


対価

一歩、踏み出すのに
僕は戸惑う
この僕の一歩で
どれほどの犠牲がでるのだろうか
それが僕にはわからないから

大切なものを守るために
僕はこの剣を手にし
ありったけの力を振るってきた

その振り上げた剣で
次はいったい何を壊すのか

僕のこの手は
見えない何かで汚くよごれ
僕の心は黒くくすんで、歪んで

君を守りたいという
その気持ちだけが
僕に見えない衝動を与え続ける


カメラマン

ファインダーを覗き込む君
いつもの光景
静寂の中、たった一つのシャッター音

変わらぬ表情
でもどこか嬉しそうな君

ぶっきらぼうで
なかなか目を合わせない君と
今日もファインダー越しに見つめ合う


正夢

教室を吹き抜ける風
君のそのきれいな髪が
ふわりとなびく

ただ君を見つめていた
見とれていた
先生の声に思わず
「なんですか」
そんなことを言って

恥ずかしくてたまらなかった
でも
振り向いた君が
あまりに綺麗に笑うから
不覚にも僕の鼓動は高鳴った

そんな夢をみた
とっても幸せな
これから起こるそんな夢


愛してる

その言葉に嘘偽りはなかった
けれど時は過ぎて
僕の中にはもうその感情はない

時が風化させたおもい
想いとともに変わり果てた僕

もう、あの頃の僕でない
それでも、君は
今でも必ず僕に囁く

「愛してる」と

翼がほしいと願ったの
でも
生えても飛べないと意味がないの

そんな当たり前のこと
みんなわかってるはずでしょ

私も知ってた
理解してるつもりだった

それでもね

翼がほしいと願って
翼が生えて
喜んで

もし飛べたなら
きっとみんなの憧れに
でも飛べない私は
周りと違う異質な人

翼がほしいと願った私
もらった翼はもういらないの

そんな矛盾を繰り返して
わたしはずっと生きていく


天邪鬼

何度目だろう
また言葉にできなかった
たった一言
たった五文字

どうしても言えない


僕の、天邪鬼


いつもそう呟く

たくさんのことをくれた
そんなあなたへの
僕にとって精一杯の恩返し

いつか言えるかな
ぶっきらぼうで
天邪鬼な僕だけど

あなたに
精一杯の
ありがとう、を


産声

「はじまり」
どうしてそんな言葉ができたのだろう
「おわり」
それがあるからはじまるの?

「終着点」があって
「出発点」もある

でも
「スタート」も
「ゴール」も
決めるのはいつも自分自身

生まれたことが「はじまり」で
死ぬことが「おわり」とするならば
産声こそが人生の「前奏曲」


モノクロ、カラフル

私は今まで
何をして生きてきたんだろう
こみ上げる不安は
だんだん大きくなっていく
ずっと思ってるんだ
ここは絶望の淵なんじゃないかって
そこから飛び降りたら
何もかも全てなくなるんじゃないかって

笑ってる顔も、怒ってる顔も
もう忘れてしまったよ

生まれてくる意味を知らずに
僕らは生まれてきたんだ
「人生は生まれた意味を探すための旅なんだ」
誰かがそう言ってた

この真っ暗な場所で
意味なんて見つかるのだろうか
「きっと見つからない」
そんなことばかり思う

今目の前にある光に気付かなかった
目をつむったままでいた
私はまだ一人なんだって
座り込んで、嘆くことしかできずに

目を開ければ、手を伸ばせば
届くはずなのに

君は僕の手を引いて
僕はようやく気づけたんだ
君っていう光がいることに

僕にとって君は光そのもので
モノクロだった旅路に色をくれた
君のおかげで世界は変わって
そのおかげで、僕は闇に飲まれることはなくなった

今の僕なら
深い闇が迫ってきたって
進んでいける